人が住んでいるような場所にはあまりいないというイメージがあるかもしれませんが、近年増加傾向にあるのが「コウモリ駆除」の依頼です
。コウモリに人間の住居などに棲みつかれてしまうとさまざまな害をおよぼすことがあり、あまり良いこととは言えません。
コウモリを見つけた時には早めに駆除をしたほうが良いです。

そのためにも、まずはコウモリの生態と習性について知っておきましょう。

目次

家に棲みつくコウモリの種類

コウモリ駆除の依頼が増加していることからもわかるように、コウモリの中には洞窟や森などに棲みついている種類以外にも人間が住んでいる住宅に棲みつくタイプがいます。
家に棲みつくタイプのコウモリは「アブラコウモリ」という種類でとても小さく、4~6cm程度の大きさしかありません。
別名では「イエコウモリ」とも呼ばれており、隙間が1cmあれば入り込むことができるといわれています。
家の屋根裏や軒下、換気口、瓦の下やシャッターの裏などに棲みつきます。
主食は昆虫で、吸血するという習性はありません。基本的に日本にいるコウモリは吸血する種類がいないのです。

家に集まってくるユスリカや蚊、ゴキブリやクモなどを食べてくれるため、害獣どころか益獣だと考えられることも多いです。
生態として注目しておきたいことは、一般的にアブラコウモリは11月頃から3月初旬くらいまでは冬眠をしており、活動しないことが多いという点です。
ただし、都市部では気温が温かいことから冬眠をしない個体も少なくありません。
住宅などは冬でも暖房を入れているので温かく、活動をしているコウモリをよく見かけます。

また7月頃から8月くらいになると出産をして、9月前後にはその子どもたちも旅立っていきます
。成長するまでの期間が短いため、気がついた時には想像以上に繁殖してしまっていたというケースが多いのはこのためです。
益獣とはいえ、それだけ大量に増えてしまっては困ることも出てくるようになります。
ちなみに、アブラコウモリの寿命はオスで約3年、メスで約5年となっています。

コウモリが害獣といわれる理由

コウモリは家にいると困るゴキブリなどを食べてくれることから益獣といわれていますが、一方で害獣でもあるということで駆除依頼がされることもあります。
それは、コウモリには害虫を食べてくれる以外に困ったところがあるからです。
アブラコウモリは1回の出産で2~3頭の赤ちゃんを産みます。
他の種類のコウモリは1回の出産で1頭しか産まないので、アブラコウモリが繁殖しやすいというのがわかります。
妊娠期間もわずか30日程度ですから、季節によっては棲みつかれてすぐに赤ちゃんが産まれていたというケースもあります。

アブラコウモリの赤ちゃんは2週間ほどで毛が生えそろい、飛ぶようになるのは1カ月たった頃です。
巣立つ前には親のコウモリと子どものコウモリたち数頭分のフンが家の敷地内に落ちてしまうのです。
アブラコウモリの主食は昆虫なのでパサパサとしていて崩れやすく、それを吸ってしまうことで呼吸器系の病気になってしまう可能性が出てきます。
コウモリが原因となって人間がかかってしまう病気は3種類ほどあります。
ハンタウイルス感染症、アルボウイルス感染症、ヒトプラズマ症です。
これらはコウモリを媒介とするダニやノミ、フンに寄生する寄生虫などが原因で感染してしまう病気です。

家に棲みつくものとして害獣といわれているネズミも、人間が病気にかかってしまう原因となりますが、コウモリは哺乳類ですからネズミよりもずっと人間に近いといわれています。
そのため、人はコウモリが原因となっている感染症にかかってしまう可能性が高いのです。
ケガをしていた野生のコウモリを手当てしようとして噛まれてしまい、重病にかかってしまったというケースもあります。
コウモリを見かけたとしても、素手でそのまま触るようなことはしないでおきましょう。

こうもり

コウモリを勝手に捕獲するのは法律違反

コウモリ駆除を自分でしようと勝手にコウモリを捕まえてしまった場合、罰則を受けなければいけないことがあるので注意しましょう。
コウモリは鳥獣保護法という法律で「有害鳥獣」とされています。
そのため、許可をとっていない人が捕獲したり、駆除してしまった時には罰則があります。
勝手にコウモリ駆除をしてはいけない理由は、病原菌や感染症などの問題があるのはもちろんですが、コウモリは法律で保護されている動物だからです。
罰則は、懲役もしくは罰金を支払うというものになっています。
良かれと思ってやったことが罪とみなされてしまうので、コウモリ駆除をしたい場合は専門家に任せたほうが安心です。

また、コウモリをペットとして飼いたいという人も稀にいますが、野生のアブラコウモリはペットとして飼うことはもちろんできません。
ペットとしてコウモリを飼うことは可能ですが、ペットショップで販売されているのはフルーツバットという種類で、主食がフルーツなのです。
また、ペット用として繁殖されているので寄生虫などがついている可能性が低く、安心して飼うことができます。
コウモリを飼うためにはストレスなく飛べるような広いスペースを確保する必要がありますし、生態系を崩すことを防止するために逃げないようにする工夫も必要です。

ペット用のコウモリは、種類によっては人になついてくれますが、野生のコウモリはまず人になつくことはないと考えておきましょう。
見た目がかわいいからといって、捕獲してペットにしようと考えるのはやめたほうが良いです。

もし家の中にコウモリが入ってきたら?

もしコウモリがいつのまにか室内に入ってきていたら、あわてずに行動しましょう。
最低限守るべきことは、素手で触らないこと、そしてできればマスクなどをしてから対処することです。
室内に入ってきたコウモリは追い出す必要がありますが、その時に使えるのが蚊取り線香やコウモリ忌避スプレー、家庭用の害虫駆除剤などです。
使用する前にコウモリがすぐに出ていけるよう部屋の窓は全開にして、コウモリが苦手とする煙を放つアイテムを使って追い出します。

コウモリは一度追い出されたとしてもまた戻ってくるという習性がありますので、追い出したからと安心して窓を開けっぱなしにしておくとまた入り込んでしまいます。
追い出すことに成功したら、すぐに窓を閉めておくほうが良いです。
特にアブラコウモリは小さなコウモリなので、隙間が1cmあれば容易に入り込むことができるので注意が必要です。

他の方法は、原始的なやり方ですが市販でもある虫捕り網などを使って捕獲してからすぐに外へ逃がすという方法もあります。
逃がす時には噛まれる可能性があるので、必ず厚めの軍手やゴム手袋をはめておくようにしましょう。
何か長めの棒を使って追い出すのも良いのですが、アブラコウモリは小さいので勢いよく棒があたってしまうとそのまま死んでしまうことがあります。
棒で叩いて追い出すようなことはせず、どこか壁などにとまったタイミングで、棒を使ってそっと窓のほうへ追い込む程度にするのがおすすめです。

傷ついたコウモリを見つけた時にはどうすべきなの?

家に棲みついているコウモリの場合、時々赤ちゃんが巣から落ちていることがあります。
コウモリは一度母親から離れた子どもはその後育てないという習性があるため、そのまま放っておくと赤ちゃんは死んでしまいます。
そういう時にはどうしたら良いのでしょうか。

もしコウモリの赤ちゃんや傷ついている成体を見かけて一時的に保護をしたい時には、許可を得る必要があります。
鳥獣保護法という法律で決められており、国もしくは地方公共団体の鳥獣行政事務担当職員や鳥獣保護員以外では特別に許可を得た人が保護することが可能です。
住んでいる県の野生鳥獣保護窓口に電話で連絡をして、相談してみるのが良いです。

コウモリの食事は虫と水だけなので、餌用として販売されている虫を与え、水をこぼれない容器などに入れて与えます。
赤ちゃんの場合はそのままの大きさの虫は食べられないことがあるので、そういう時は細かく切って食べやすい大きさにします。
水は赤ちゃんも飲むことができますが、飲まないようであればガーゼに含ませて吸わせたり、100円ショップなどでも販売しているスポイトを使えば飲ませやすいです。
もし自宅でペットを飼っている場合でも、コウモリから直接何か感染症にかかってしまうというケースは稀です。
ただ、そのコウモリにダニやノミなどがついていた場合にはペットにもついてしまう可能性があるので、保護しなければいけなくなった時は別の部屋で過ごさせるようにするか、やはり専門家に任せておくほうが良いです。

コウモリを追い出した後は室内の消毒を

コウモリを室内から追い出した後は、念のためにコウモリが触れた場所は消毒をしておくようにしましょう。
理由としては、野生のコウモリにはカビ菌や細菌などがついており、それらが体内に入ってしまうことでアレルギー症状が起きてしまうことがあるからです。
特にコウモリのフンは崩れやすく、しかも乾燥しているので、それを無意識に吸い込んでしまえば感染症になってしまう場合があります。

コウモリのフンを見つけたら、マスクと手袋をしてからホウキを使って取り除きます。
きれいになったらアルコール消毒をして、ぞうきんなどを使ってふき取りましょう。
簡単にできるからといって掃除機でフンの処理をするのは、逆に吹き出し口からフンの粉末が飛び散ってしまうことになりかねませんし、掃除機のヘッドにフンの菌がついてしまいます。
掃除できたら、最後に改めてアルコールスプレーを使って部屋全体を消毒します。
部屋を消毒している間は、子どもやペットなどは他の部屋に避難してもらいましょう。

部屋の消毒用のアルコールスプレーは市販でも販売していますから、そういったものを利用して室内を徹底的に消毒しておきましょう。
特におすすめは消毒用エタノールです。
1本あれば殺菌と防カビができ、しかも使い方次第では汚れも落とすことができるのが便利です。コウモリを追い出した後の消毒だけではなく、季節ごとに流行する風邪など病気対策にも使えるので、普段から家に1本常備しておくのがおすすめです。

消毒

まとめ

益獣とも害獣ともいわれるコウモリですが、棲みつかれていては心配になることのほうが多いのではないでしょうか。
家に棲みつくのはアブラコウモリ(イエコウモリ)と呼ばれる種類ですが、その生態や習性を知っておけば自分でも簡単な対策をすることは可能です。

コウモリを捕獲したり、勝手に駆除することは法律で禁止されているので、自分ではどうしようもない状態であればコウモリ駆除の専門家に依頼するのがおすすめです。