コウモリは、世界中で約980ほどの種が存在しています。

日本に生息していて、人の家に住み着き被害をもたらすコウモリはごく一部の種類だけです。
家に被害をもたらす、代表的なコウモリの生態や特徴を解説します。

目次

被害が最も多い「アブラコウモリ」

日本において、人の住む家へ被害をもたらすのは、ほとんどがアブラコウモリ(イエコウモリ)です。

日本に生息しているコウモリとしては唯一、家屋をおもに巣とする「住家性」という習性を持っています。
イエ(家)コウモリという別名は、この習性が由来となっています。
山間部・平野部・都市部を問わず、どんな土地でも人の家屋に住み着き生息しています。
家屋の場合は軒下・天井裏・換気口・戸袋の中などを好んで巣としますが、高架下や倉庫などの建物の中も巣にしています。

成獣のコウモリでも体長はわずか4~6cmで、体重も5~10g程度という小ささです。
体毛は黒っぽい茶色、または灰色と茶色を混ぜたような色で、皮膜も同じように灰茶色または焦げ茶色です。
子供は全体的に黒っぽい色をしています。

蚊や蛾などの害虫を捕食するため「益獣」としての一面も持っています。
しかし、一か所に数十匹~100匹にもなる大きな群れをつくり住み着くことがあり、糞や尿による害や悪臭、寄生虫やバイ菌の増殖が問題視されています。

ヒートアイランド現象によって平均気温が高くなり、それによってエサとなる昆虫も多く捕食できる都市部は、アブラコウモリにとって特に生活しやすい環境となっています。
これにより、都市部では年々、アブラコウモリによる被害件数が増加しています。

近年家屋に浸入「ヒナコウモリ」科

先に取り上げたアブラコウモリは「ヒナコウモリ科」に属しますが、他種のヒナコウモリは、基本的に樹洞や洞穴に営巣します。

しかし近年、家屋をはじめ高架橋の隙間などで営巣する事例が報告されています。
本来の生息域である森林や山の開発によって、巣にできる洞穴や樹洞が激減していることが原因とされています。

ヒナコウモリの身体はアブラコウモリよりも一回り大きく、白っぽくて長めの毛が生えています。
おもに蛾など、飛ぶ昆虫をエサとします。
コウモリにしては珍しく、1回に2~3頭の子どもを産むことがあります。

このまま生息域の減少が続けば、アブラコウモリのように、家屋へ侵入して生息する個体が増えていくことになるでしょう。

一部地域に生息「オオコウモリ」科

日本の南側では、アブラコウモリよりはるかに大きい「オオコウモリ」科に属するコウモリも生息しています。
オオコウモリ科のコウモリは、アブラコウモリのように家屋へ住み着いて被害を与えることはまずありませんが、食害などによって人間へ被害をもたらすことがあります。

1.オガサワラオオコウモリ

小笠原諸島に生息するオガサワラオオコウモリは、体長約20~25cmほどのコウモリです。
おもに森林に生息し、夜行性で、昼間は木の枝にぶら下がって寝ています。
若葉や果実、花の蜜などをエサとします。
1~3月に交尾をし、初夏に1頭の子供を産みます。
人に危害を加えることはまずないものの、農作物を食害する害獣とみなされることがあります。
森林開発による生息域の破壊や観光客などによる撹乱、農作物防護用の網に絡まって命を落とすなどの理由により数が減っているため、絶滅危惧種IB類として、レッドリストに載っています。

2.エラブオオコウモリ

鹿児島県口永良部島とトカラ列島に生息する、体長約20~25cmのコウモリです。
おもに森林に生息し、昼間は群れで木の枝にぶら下がって休息しています。
夕方になるとエサを求めて動きはじめます。
おもに果実をエサとしますが、果汁だけを吸い取り果実は捨ててしまいます。
オガサワラオオコウモリと同じく、食害が指摘されています。
7ヶ月ほど妊娠し、1回に1頭の子供を産みます。
絶滅危惧種IAおよび天然記念物に指定されています。

まとめ

家屋に被害をもたらすのは、ほぼ「アブラコウモリ」です。
自然界にはその他のコウモリも生息していますが、人へ与える影響は食害程度とされています。