街中で見かけることの多いハトは、身近な生き物として親しまれていますが、実はハトが持っている病原菌は人間に感染する可能性があるのです。

自覚症状がないまま自然治癒することもありますが、免疫力が落ちている時などには重症化するリスクもあります。そのため、どのような感染症にかかるリスクがあり、どう予防するかを知っておくことが重要です。この記事では、ハトからの感染症とその対策について解説します。

目次

要注意!ハトから感染する恐ろしい病気とは

ハトの体内には、感染症の原因になる寄生虫や病原菌が多く存在しています。そのため、羽根や糞を媒体として寄生虫や病原菌が人間の体内に侵入する可能性があるのです。例えば、カビ菌の一種である「クリプトコッカス真菌」は、ハトの糞の中に大量に含まれている場合があり、口や皮膚から侵入し、肺に感染することがあります。クリプトコッカス症は発症すると、発熱や頭痛、湿疹、鼻水などの症状を引き起こします。さらに、血液中に菌が入り脳や髄膜に感染すると、脳炎や髄膜炎など重篤化する可能性もあります。昏睡状態になったり、記憶障害を引き起こしたりする場合もあるため、注意が必要です。特に、免疫力が落ちている時に感染すると重篤化する傾向にあります。

同じくカビ菌の一種である「ヒストプラズマ真菌」によるヒストプラズマ症は、体内組織の炎症を引き起こし、インフルエンザのような自覚症状が出ます。数週間で自然治癒することがほとんどですが、肺疾患や免疫不全の人は致命的な病状になることもあるのです。大量に吸引すると、急逝肺ヒストプラズマ症になる恐れもあります。乳幼児が感染すると、急激な症状の悪化や最悪の場合は死を招く危険性の高いカビ菌です。

ハトの糞に含まれることが多い「トキソプラズマ原虫」は、肺に感染する寄生虫です。発熱や筋肉痛、倦怠感など、軽いインフルエンザのような症状が特徴であるトキソプラズマ症を引き起こします。特に、免疫力がまだ弱い乳幼児は、症状が重篤化しやすいといわれています。また、妊婦が感染すると、胎児に障害が残ったり流産の原因となったりする感染症です。

感染症対策の基本は糞掃除

感染症の原因となる病原菌は、ハトの糞や羽に多く含まれています。そのため、外出先であればハトや糞になるべく接触しないようにすること、自宅の周辺であればできるだけ掃除することが感染症対策の基本といえるでしょう。糞掃除の際にも、なるべく糞に接触したり、吸引したりしないように、ゴム手袋やマスクで肌を露出しないような準備をした上で行いましょう。まず、固くなった糞を40~60℃のお湯で柔らかくしましょう。固まって取れなくなっている場合には新聞紙やキッチンペーパーを置いてお湯をかけ、5~10分ほど放置しておくと落ちやすくなります。汚れたらすぐに新しいものと取り換えながら、拭き取ります。使い終わったものは必ず捨てましょう。

最後に、糞があった場所を消毒します。次亜塩素酸ナトリウムの入った消毒スプレーや、エタノール消毒スプレーを使ってください。どちらもドラッグストアなどで購入することができます。どちらのスプレーも除菌効果はありますが、次亜塩素酸ナトリウムの入った消毒スプレーのほうが、除菌力が強いです。ただし、金属を溶かす性質があるため、金属部分にスプレーするのは避けてください。

自分に合った方法で感染症対策を

感染症を予防するには、ハトに近づかないことが重要になります。駅や公園など、普段利用する場所でもよく見かけますが、群れになっている場所などには近づかないようにしましょう。住居や工場にやってくる場合には、近づかないようにグッズを使う方法もあります。ハトが苦手なヘビのおもちゃを置くと、近寄らなくなるといわれています。また、ハトは磁場を頼りに飛ぶ習性があるので、磁石を置くとハトの方向感覚が狂って近づくのを嫌がるため有効です。さらに、光るものを嫌う習性を利用してCDを置いたり、防鳥ワイヤーや剣山、ネットなどを利用して、ハトがベランダの手すりなどに止まったり侵入したりするのを防ぐことができます。

また、ハトが苦手なにおいを使ってハト除けをすることも可能です。ハトはミントやバラのにおいが苦手なので、ミントなどのオイルを水で薄め、ハトがよく来る場所にスプレーします。こまめにスプレーすることで、効果を持続することができます。忌避剤を使うのもよいでしょう。ただし、ハトを捕獲したり殺したりすることは、鳥獣保護法で禁止されています。そのため、追い出すか追い払うことがハト対策の原則です。

まとめ

何度追い払ってもハトがやってくる場合は、専門業者に依頼することを検討してみましょう。特に、工場などのように広い範囲で駆除が必要な場合には専門業者に依頼することで効率的に作業を進めてもらえますし、専用の道具を使うことができるので、より確実に駆除をしてもらえます。ハト被害に困っている場所や、ハトの数によって対策は変わってきます。自分に合った方法で、ハト対策を行いましょう。